徒然なるままに No.2(2009/11/10 更新)

 記憶がかすかに残る今のうちに、ミキシングエンジニアとして過ごした時代の話も挟みながら今日のピュアオーディオついてに、徒然なるままに書き記していこうと思います。

● マスタリング(Mastering)


 先日、車を運転中にFM放送をつけたらマスタリングエンジニアが出演している番組がありました。途中から聞いたので、いきさつは判りませんが、アナウンサーが「そもそも
マスタリングって、何をするのですか」と聞くと、そのエンジニアの方がいろいろ説明はしていましたが・・・・一般視聴者の方でいったい何人の人が話の内容を理解できたのでしょうか・・・・

 ところで、ビートルズのアルバムが全面的に「リ・マスタリング(Re Mastering)」されて発売されたのは記憶に新しいところですが、概ね激変で、えっ、これって同じ曲なの、という感じですね。
 余談ですが、今回のビートルズのRe Masteringの中でノイズ取りに使われたのが前回のEssayの「もう一つのエピソード(過渡応答特性)」でご紹介したCEDAR社のマシンです。20年経ってもいまだにこの会社の製品を越えるノイズ取りマシンは登場していないようですね。

 さて、この「マスタリング」や「リ・マスタリング」という作業ですが、私が具体的にその威力を体験したのは今から30年ほど前、京浜東北線、新子安駅の近くにあるビクターの工場でした。日本におけるJAZZレコーディングの草分け的存在である及川公生氏に案内されて氏の録音によるアルバムの最終マスタリングを見学させていただきました。ただし、この当時、この種の仕事を日本でもマスタリングと呼んでいたのか、それともカッティングエンジニアの仕事であったかは記憶しておりません。アメリカでは1969年(40年前)にマスタリング専門のスタジオ「スターリング・サウンド(sterling sound)」が活動を始めているのでそれ以前から「マスタリング」が業界用語として定着していたものと思われます。

 ビクターの試聴室に入ってしばらくすると、完成した2トラックのマスターテープからノイマンのカッティングマシンで刻まれたラッカー盤が試聴室に持ち込まれ、DL-103で再生され、これを及川氏やプロデューサーが聞き、最終的な要望をマスタリングエンジニア(カッティングエンジニア?)に伝えます。
 静かに聴いていた及川氏が一言発しました。「もう少しピアノが前に出ると嬉しい!」と。
 エンジニアは専用のコンソールに座って何回かマスターテープを聞きながら、多分、EQ(イコライザー)のツマミだと思いますが、ほんの少しだけ回したような気がします。
 そして、再びラッカー盤に刻んで試聴室で試聴します。えっ、これってさっきと同じマスターテープ!!!。ピアノトリオのピアノだけが明らかに前面に張り出しているように聞こえます。私の頭の中は?????。(ミキシング時点でやるなら極めて簡単な事ですが・・・)

 そもそも放送番組の録音にはマスタリングという概念はありません。放送は「送りっ放なし」の世界であり、特に生放送でマスタリングという作業は不可能です。逆に言えば、放送はマスタリングの作業を包括してミキシングをしているとも言えます。
 例えば渋谷のホールから生放送する場合、ステージ上の演奏と4,000人のお客様が醸し出す臨場感をそのまま家庭のテレビから効果的に再生されることを目指して音を創っていきます。

 こうした録り直しが絶対に不可能な場面でミキシングエンジニアに求められる特別の技があります。
 生放送では10本の指がフェーダーの上に置かれ、瞬時、瞬時の状況に対応しながらサウンドを創っていきます。この時、ミキシング作業をしている自分が、一瞬、自分から離れてモニタースピーカーの音を客観的に聞いてみることです。一人の視聴者として、あるいはプロデューになったつもりで、そして出演者の耳で、今、モニタースピーカーから出ている音が正解なのかどうかを冷静に評価してみます。

 もし、ここで修正が必要と判ればミキシングエンジニアとしての自分に戻って瞬時に対応しなければなりません。そしてまた次の瞬間には自分を離れて客観的にモニターの音を聴いている自分が居ます。

 ミキシングをしている最中はステージ上の演奏者の一人になって、一緒にサウンドを創っています。つまりこの瞬間は音楽にのめり込んで気持ちが高揚し、極端な場合はある種のトランス状態になっています。これはこれであるべき姿なのですが、これだけでは大きな失敗(勘違い)をすることもあるのです。これを防ぐための手段が先ほどの特別な技なのです。

 最初は頭の中で意識しながら、例えば数分に1回程度、主観と客観状態の自分を行ったり来たりします。そしてこの切換をどんどん速くしていき、最終的には二つの状態が一人のミキシングエンジニアの中に同時に存在するようになるとこの技は完成です。
 これが可能になると生放送においても常にマスタリング効果を付加したミキシングができることになります。

 改めてマスタリングとは。


平成5年11月26日  
栗原 信義  
衛星「Bモード」放送とは
〜Bモードミキシングの手引き〜

 1.Bモード放送とは
 2.Bモード放送の特長
 3.Bモード番組とは
        以上は省略


 4.Bモード放送番組の条件(明確な規定はなく、その精神を述べる)

 ◆ その内容が人に感動を与える第一級のエンターテイメントであること
 ◆ 最高品質のメディアにふさわしい内容と音声品質を持つ番組であること
 ◆ 新たに番組製作を行う場合にはPCM録音機器を使用し音声品質の確保に
   最善を尽くすこと
 ◆ 購入ものなどで、特に優れた内容を持つ番組である場合、技術的な品質に
   多少の問題があっても、Bモード番組として扱う


 この手引き書は私が現役時代に書いたもので、当時の指針として使われました。この中の「Bモード番組の条件」の項目は、最近のオーディオ界で話題の高音質CDにおける様々な現象にも通じるものがあると感じています。

 高音質CDには記録フォーマットそのものが異なる「SACD」や、フォーマットは同じで例えばディスクの素材が違う「SHM-CD」、「HQCD」、「Blu-specCD」、そしてガラスと金メッキの「K2HD MASTERING+CRYSTAL」などがあります。

 Bモード放送もCDも、その中身はデジタル化された音声信号(符号)です。このデジタル化されたオーディオ信号については改めて書いてみたいと思っていますが、ここではオーディオの世界ではおなじみのPCMデジタルフォーマットの大きな特長だけを見てみます。

 衛星放送の場合、3万6千キロメートルの彼方から電波が到来するため、地上付近で強い雨などの影響を受けると電波が減衰して符号の誤り率が上昇します。CDではディスクの盤面や、ピックアップの汚れ、ピックアップの制御不良などによってピットの読み取りエラーが増大し、符号の誤り率が大きくなります。

 この時、PCM信号では符号の伝送や読み取りに多少の誤りがあっても100%元の信号と同じものとなるような仕組みが備わっています。

 例えば下の図のように、Kurizz-Labo商店が発行したレシートが汚れなどで数値の一部が見えなくなったとしましょう。
 レシートの数字がはっきりしないのを良いことに、奥様に「今回買ったSPはとても安かったよ。」と嘘をついたとします。奥様はジーーーーっと、レシートを見つめ、あなた!SPは50円でしょ、結構良い値段だと思いますよ。と、怖い顔をしています。・・・・私は知ーーらない。っと。


 奥様がSPの値段をどうして知ったかはもうお解りですね。180-(100+30)=50 という計算をするとSPの価格が50円であることが解ります。
 音楽をPCMデジタル信号に変換するとき、レシートのDEQXやSP、Ampなどがそれぞれの音を表しています。合計の値は音そのものに直接の関係ありませんが、これを入れておくことによって情報の一部が欠落したり解らなくなっても完全に元の情報に戻すことができます。実際にはもっともっと複雑な処理を行ってかなりの信号が欠落しても100%元通りの信号に復元できるように設計されています。
 このように、元通りの信号に戻せる範囲を「Correction(訂正)領域」と呼び、この範囲に入っている状態では原理的に音質の劣化はありません。

 次の図はBモード放送やCDに使われているPCMデジタル信号の符号誤りと音質の関係を示した概念図です。



 100%元通りの信号に復元できる「Correction(訂正)領域」(青い線)を越えて誤りが大きくなるとさすがに元通りの信号には戻すことが出来なくなり、音質の保証はできないが頑張って音を出します。というモードに移ります。これがオレンジ色の線で示した「Interporetion(補間)領域」です。
 この領域は欠落した信号部分を前後の信号から計算(通常は平均値を計算で出す)して欠落部分を補完します。この信号は欠落した元の信号に近いものですが、100%元通りというわけではありませんので、当然音質は低下します。この段階から更に誤り率が大きくなると補間しきれない状態となり、ノイズが出たり、明らかに歪んだ音に変化してきます。
 そして、これ以上は音としては出せないと判断すると出力そのものをカットする「Mute(消音)」モードに移行します。

 こうした3つのモードへの対応はどのようなデジタル放送受信機でも、そしてCDプレーヤーなどのデジタルオーディオ機器でも、PCMデジタル方式のものでは全て同じです。

 コンピューターで利用しているCD-ROMなどからのデーター信号はたった一つの信号の間違えも許されませんので「Correction(訂正)領域」のみが正常な状態として扱われ、「Interporetion(補間)領域」は「読み取りエラー」として処理されるようになっています。

 こうした状況を踏まえてか、PCオーディオは1bitの誤りも許されないからCDプレーヤーで再生するよりも音が良いというのは本当でしょうか。

 これ以上はここでは深入りしませんが、CDプレーヤーもPCオーディオも「Correction(訂正)領域」で動作している限り100%元通りのデジタル信号がD/Aコンバーターに送り込まれてアナログ信号に戻っていることになります。(D/Aコンバーターが音質に与える影響は少なくありませんが・・・これについては改めて興味深いお話しをさせていただきます。)

 さて、ここからが本題です。

 信号の記録フォーマットは全く同じでディスクの素材だけが違う「高音質CD」はデジタル信号を読み出す時に通常のCDディスクと何が異なるのでしょうか。



ITmedia(アイティメディア株式会社の登録商標)というサイトに掲載されていた「高音質CDブームの行く末」と題する評論の中に次のような一節がありました。

※HQCDについて

 実際にその音を聴いてみると、確かに音質の向上がSHM-CDよりもはっきりと分かる。とくに良好なのが音の鮮度とボリューム感。フォーカスが良 くエッジも効いており、加えてボリュームを上げたかのようにダイナミックレンジが広がるため、強弱、ニュアンスの細やかさがともに向上、音に迫力と生々し さが感じられるようになった。

※Blu-ray Discについて

 実際のサウンドは、感服するほどのリアリティー。音がむき出しで、通常CDの音がまるで反射音を聞かされていたと勘違いするくらい、輪郭がはっき りとしている。良質のマスター音源では、どこまでも深くリアリティーを感じ取ることができるようになる。だから音源の良くないものは、そのデキの悪さがあ からさまとなる。また通常CDではマスター音源からCDへなる際にクオリティーダウンしていたため、それがある程度の“なじみ効果”を生み出していたのだ が、そういった変化が限りなく押さえ込まれたために、重ねどりの違和感も顕著になるので、エンジニアサイドからは”もろ刃の剣“となるかもしれない。どち らにしろ、ユーザーにとっては、CDでCD以上の音楽を楽しむことができる、肯定的な存在であることは確かだ。

※ガラスCDについて

 そのサウンドは、とにかくマスター音源の良さが際だつ。通常CDとは、音の細やかさもダイナミックさもまるで違う。その差はSHM-CDなどとは比べもの にならず、全くの別物のCDとしか感じられなかった。顕著なのがビアノの音。倍音や付帯音が豊かに広がっていくため、演奏している場所の空気感までもリア ルに感じ取ることができる。また新しい発見だったのが、演奏者のノリ。なかでも川井郁子のヴァイオリンは力強い弓弾きがとても好きだったのだが、単にノリ で弾いているのではなく、音の響きをきちんとコントロールしている冷静さが垣間見られたのが意外だった。

と書かれています。凄い耳の方だと思います。
 私のような古い人間には、大昔、アナログディスクの材質や厚み、重量などをあれこれ変えて高音質ディスクとして発売された状況に似ていると思いました。でもこの時は確かにディスクの違いが音に現れていました。なんと言っても音がそのままディスクに刻まれ、これをダイヤモンドの針で擦って電気信号に変換するという実にダイレクトなプロセスですので、ターンテーブルの回転ムラなども含めてある意味では全てが音に出るという状態でした。・・・でもCDに刻まれているのはデジタル信号ですよね。

◆ そして
CDを制作する側のコメントとしてHQCDのマスタリングを担当した山下由美子マスタリング・エンジニア(コロンビア)がWebサイトで次のように述べています。
(ここでは勝手に要約とさせて頂きました)

★HQCDの発売にあたって

 HQCD化にあたり、録音から20年以上を経た名盤をさらに魅力的な作品として蘇らせる。
 1980年代の原盤で作られたCDは最新録音と比べると平均音量レベルが低く痩せた音に聴こえる。過去のマスターテープはダイナミック・レンジを忠実に録音・商品化したため、通常の再生システムではコンテンツの魅力を充分に伝え切れていなかった点などを改善する。
 「HQCDという新しい器を存分に生かすこと」と、「過去の名盤を、最新録音に肩を並べるレベルで蘇らせる」という2つの目標でマスタリングを行う。つまり、この企画(HQCD化)のキーポイントは「どのようにリマスタリングを施すか」です。

と述べられています。そして、

★制作意図(音作りの方針)リマスタリングの実際

 どんなに新鮮・良質の食材でもシェフの手が加わらない限りは芸術的価値を持つ一皿にはなり得ないように、収録時の音源そのままの再生だけでは魅力的なアル バム創りは難しいと言えましょう。今回、全20タイトルのリマスタリングのシェフは山下由美子マスタリング・エンジニア。目覚しい進歩を遂げた機材を操っ ての音の調整の判断を任されていて、いわば、彼女の耳が最終基準と言っても過言ではありません。DENONレーベルの録音ポリシー「ピュアでナチュラルな 音」を行なってきたエンジニアの一人であり、今回のプロジェクトの最適任者といえます。「いかにしてマスターテープの音楽的魅力を伝えるか?」という今回 の制作意図に強い共感と理解をしめした彼女は、実際の音作りに当たっていくつかの提案をしました。

● 聴感上のダイナミックレンジを拡大する(電気的なダイナミックレンジは縮小:筆者)
● 音楽のバランスを重視した、質感の補正と向上

★終わりに
 当時、夢のオーディオと謳われたCDが普及してゆくにつれて、趣味としてのオーディオは次第にかつての熱気を失っていったように感じられま す。一定水準の品質であれば比較的簡便に実現できるというデジタル音響技術の特徴が、まさにそれゆえの結果として、「それ以上」を求めないユーザーの拡大 をまねいたのだとすれば、なんとも皮肉な結末と申さねばなりません。
 ところが、圧縮音源と携帯オーディオの氾濫する今日の状況下で、新素材を用いた高品質CDが、大きなムーヴメントとして多くのユーザーのご支持をいただいたという事実は、より良い音・音楽を聴く楽しみを求めるユーザーがまだまだいらっしゃるのではないかと、ソフト制作の現場スタッフの大きな励みになったこ とを、率直に申し上げたいと思います。良質なソフトを丁寧にチューニングしたオーディオ装置で楽しんでくださってきたユーザーの皆様に加えて、一般の多く の音楽ファンの方々にとって、このシリーズが、「良い音で音楽を聴く喜び」にふれるきっかけとなるならば、これに勝る喜びはありません。

 と、述べられています。(
全文はサイトをご覧下さい

 以上の話をさらに要約すれば、HQCDという新しいイメージの入れ物が出来たので、これを機会に過去の優秀な音源をマスタリングの力で「現代風の音にお化粧直しをして発売」する。という事になります。

 

 音質比較用として発売されたこのCDは「リマスタリング&HQCD(DISC-1)の効果を、全く同じ部分を収録した従来音源&従来CD(DISC-2)と比較することができる」ものです。

 ここで注意したいのは、これら2枚ディスクの音の違いが従来のCD盤と HQCD という新しい入れ物による違いではないと言うことです。音の違いの99.9%はマスタリングの効果によるものだと言えます。

 だからけしからんというのではありません。私も「衛星Bモード放送」という新しいフォーマットを手にしたとき、前述のBモード放送の指針に記載した[
4.Bモード放送番組の条件]の4項目のように、受け手である視聴者にBモード放送は「音が良いですよ」という解りやすいメッセージを送ると共に、実際にプログラムを聴いて損をさせないだけの内容を備えています、というアピールとして「Bモード」という言葉を使いました。

 HQCDなどの高音質というイメージを持つCDがマスタリングという力を得て過去の名演が現代に蘇り、結果として多くの人の耳に、そしてハートに響くのであれば、細かいことは抜きにして高音質CDブームは大いに歓迎すべき事だと思います。


■ もう一つの話題。9人のマスタリングエンジニアが競演

 Sound & Recording Magazine の2009年3月号に面白い記事がありました。「sterling soundのエンジニアによるマスタリング競演」という企画記事です。何とこれが記事だけではなく、付録のCDに元となったマスター音源と、9人のマスタリングエンジニアがそれぞれの思いでこのマスター音源を加工した音を実際に聴き比べることができるのです。私の記憶ではこんな企画は今までに見たことも聞いたこともありません。(スタジオが企業秘密を明かすようなものですから)



 実際に聴いてみました。とりあえず女性ボーカルに注目して聴くとその違いは明らかです。そして9人のエンジニアが同じマスター音源を聴いて、何を考え、どのような音にしたいのか、どのような機材を使って実現したかが記事として書かれています。これを読んでから改めて9名の作品を聴くと、手品の種明かしを見た後のように、「なるほど」と思います。そして、マスタリングの威力をまざまざと感じさせてくれる大変貴重な資料です。
 録音(ミキシング)で音が変わるのは当然としても、既に完成しているマスター音源がマスタリングによってどう変わるのか、どこまで変わるのか、つまり、CDを制作する側に何が出来るのかを知る意味でもオーディオファンの皆様に是非一度お聴きいただきたい資料です。

(今ならまだバックナンバーが手に入るようです → 
問い合わせはこちらから。

■ ある友達の話

 既発売のCDはマスター音源をそのまま忠実にCD化したもの。そして、バックの演奏に厚みを付け、ボーカルがすっきりと前に張り出したマスタリング処理を行った音を今までとは異なる素材で作られたディスクに入れ、何も言わずに「高音質CD」として売り出したらどうでしょうか。

 たまたま従来のCDが手元にあった友人はおもむろにこれと聞き比べ、「こんどのCDは音の厚みもボーカルの抜けも全く違う、圧倒的なクォリティの向上が実感できる。凄い!、まさに高音質CDだ!」と友人は絶賛していましたが・・・・・

■ 独り言

 SACDとCDのフォーマットが同居するハイブリッドディスクを制作する場合、私だったらSACDの方に入れる音は高域のある帯域を僅かに下げて記録します。
 こうしておけば聞き比べた時に、CDフォーマットの方はSACDに比べれば僅かに固く、きつい感じに聞こえるはずです。そして、SACDはこれに対して、上品で空気感漂うナチュラルな質感として高く評価されるでしょう。大成功です。
 もし、本当に、全く同じ音を入れてその違いを明確に感じとれる人が100人に一人いたとしたら、それはそれで、SACDの存在価値は大いにあると考えますがいかがでしょうか。

 このつづきはまた・・・・・