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beyma:TPL-200/B (プリーツ型平面振動板ツィーター)
2023-09-V1.0
出展/出所 : Kurizz-Labo
Air Motion Transformer(AMT)タイプ
平面振動板ツィーター:TPL-200/Bのスペシャルリポート


■ 大きな振動板の効果か、圧倒的に静かなのに圧倒的な音の存在感を示した
■ これまでも、ホーン、リボン、ドーム等々、各種のツィーターを試してきた
■ しかし20kHzまで再生できる大型ホーンによる歌手の実在感を超えなかった
■ そのTADのホーンシステムがついにツィーターを受け入れ、3Wayに深化した
■ 一言で言えば、コンプレッションホーン特有の歪みが拭い去れたイメージだ
■ ベルベットボイスがシルクボイスに昇華し、しかも、実在感はそのまま顕在
■ 業務用の無骨なユニットのどこにそんな魅力(実力)が潜んでいたのか ・・



< 様々なクロスで試聴。現在は5kHz(96dB/oct.)で使用中(ONマウスはSEASのドームユニット >


< システムに組み込んで試聴中のTPL-200/Bユニット >

初めて経験する“静かさ”と圧倒的な”存在感”の両立はなぜ可能なのか?

■ AMT(Air motion transfer)方式について

◆ AMTユニットはハイルドライバーでお馴染みのオスカー・ハイル(Oskar Heil)博士が発明しました。この特許が2004年で切れたことからこの方式の製品が世界中のメーカーからで登場してきました。

◆ AMT方式の特徴は・・・

プリーツ構造の振動板を使って空気を押したり引いたりすることで音を出すユニットです。

アコーディオンやフイゴはゆっくり動かしても早い気流の流れを造り出すことが出来ます。

プリーツ構造で発生する空気の移動速度は振動板の動きより速くなる(5倍程度)ことから「Air motion transfer」と名付けられました。

従来のユニットは振動板を前後に動かして空気の疎密波をその前面に直接造り出していましたので振動板と空気の動きは 1:1でした。

また、例えば幅が1インチ(25o)のAMT振動板は直径8インチ(25p)のコーン型ユニットと同等の空気の移動量が得られます。(TPL-200は幅35o)

AMTユニットは折り畳まれた振動板が小さな可動範囲で済むことから大型ドライバーの点音源バージョンのように動作し、本質的に音の歪みが小さくなります。

少ない電力で大きな音圧が得られるのも特長で、TPL-200では101dB/W/mという高能率を実現しています。

このため良質な数ワットのパワーアンプで十分にドライブできるためシステム全体のC/Pにも優しいユニットです。

ただし、低域の再生は苦手で多くの製品では600〜1kHz以上での利用を想定しています。

特別な例ではヘッドホン用などで幅と深さが異なる折り目を持つ振動板で10Hzまで再生できる製品も出ています。

今回実測した指向特性では上下に狭く左右に広いという特徴がありました。これはホーン型ユニットなどと似ていることも興味深いところです。

音響特性が理想的な部屋であればドーム型などの広い指向性のユニットにもメリットがあります。

しかし、上下左右で音響特性が大きく異なるような部屋では逆にある程度指向特性が狭い方が壁などの影響が少なくいため良好(正確)な再生特性が得らる可能性があります。

こうした数々のメリットがあるAMT型は高域再生ユニットの今後の主役になっていくかもしれません。


■ クリズラボでの試聴と測定

・ 仕事でTADの「EXCLUSIVE model2401twin」モニターを長年聴いてきた
・ このシステムのホーンは2kHz付近に大きなピーク(下図-03参照)がある
・ 2007年、そのTADのユニットで家庭用のスピーカーシステムを組み上げた

・ 2kHzのピークはDEQXが完全に制御して家庭用のHi-Fiスピーカーとなった
・ 350Hz以上の全帯域を解き放つホーンの魅力は歌手がそこに居る実在感だ
・ その後、2Wayの魅力を堪能しつつも3WAy化へのチャレンジを続けてきた


< 試聴してきた各種のツィーターユニット(一部) >

・ 最後に残ったseasのドーム型は弦に広がり感を追加するには最適だった
※ seas : MILLENNIUM T25CF002 E0011
・ しかしボーカルやソロ楽器中心の曲ではその実在感が確実に希薄となった
・ 2/3Wayを切り替えられる仕組みだったが圧倒的に2Wayが好ましかった
・ ツィーターが見えるため試聴された多くの方が3Wayだと思っていた(笑)

・ 先日、「興味があれば」とのことで評論家M氏からユニットが届けられた

・「渡りに船」早速設置してDEQXで4個のクロスオーバーをセットし試聴
・ 2k、3k、5k、7kH ・・・ 明瞭な違いがあり、ベストは5kHzに迷わず決定
・ ジャンルを超えた世界で、静かさと圧倒的な存在感の両立が確認できた
・ 14年目にして我がシステム(TAD)との「ベストパートナー」だと直感!

・ 聴いて良ければ全て良し・・なのだが、測定で見えてくるものは無いのか?
・ 3Way化して2ヶ月。改めてユニットの特性を測定した結果が下の図です


■ 測定結果(下の行選択でデーターが表示できます: 別画面で表示
(beyma:TPL-200 / seas:T25CF002 / TAD:4001)



■ 考察

・「静かさと存在感」の源が「歪みと指向性」にあるのではないか?
・ 歪みの測定は困難でも指向性はDEQXで多少の手間を掛ければ可能

・ 図-01、02、03が各ユニットの水平方向の指向性を調べた結果です
・ 8kHz付近で0°と45°のレベル差を見ると3機種とも6dB程度でした

・ 同様に、図-04、05、06が垂直方向の指向性です
・ seasは水平・垂直ともレベル差が同等(6dB)で、さすがドーム型です
・ これに対してbeymaは垂直方向では20dBものレベル差が生じています
・ 音圧で6dBは半分、20dBは1/10となり、聞こえないレベルです
※ スピーカーは通常-10dBまでが再生周波数範囲となります
・ 実はTADの垂直(図-06)も17dBの差がありbeymaに近い特性です
・ つまり、ツィーターもホーンと同様に上下には広がり過ぎない特性です
・ これは業務用のPAスピーカーに求められる重要な特性でもあります
※ 音を遠くまで均等にボケずに届けるための特性
・ 音が散らない、ボケない指向特性が「実在感」の源かもしれません

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・ もう一つの「圧倒的な静かさ」の方は「歪み」と関係がありそうです
・ コンプレッションホーンは空気の直線性の影響で歪みを発生します
・ リボン型は音波を直接放射するので同様な歪みの発生はありません
※ TPL-200はハイルドライバーが原型のAir Motion Transformer(AMT)タイプです
・ beymaユニットの歪みに関する情報は残念ながらみつかりませんでした
・ そんな中、類似の製品に分かり易いデーターがありました(下図)

※ Alcons Audio社の資料より:リボンツィーターは同社の「Pro-ribbon RBN601」 - 同社HP

< コンプレッションホーンとリボンユニットにおけるインパルス応答の累積スペクトラム(参考資料) >
( 図の奥が起点で、手前に時間(2mS)、左右が周波数(1k〜20kHz)、高さがレベル(dB)です)


・ この図は信号が切れた瞬間から時間と共に音が減衰していく様子を見たものです
・ 一目瞭然、リボンドライバーの方が極めて綺麗に減衰しているのが判ります
・ コンプレッションドライバーは高域に特徴的な残響(歪み)成分があります
・ 確定的なことは言えませんが聴感上の「静けさ」と関係がありそうです

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・ 業務用のPAスピーカーにも新しい時代(ユニット)が到来しているようです
・ 世界中のプロに使われる製品には品質とコストで圧倒的な優位性があります
・ これが家庭用のDIYシステムにも新たな風を吹き込んでくれるかもしれません
・ 今回はM氏のご厚意で入手した注目のユニットについて駆け足で見てきました
・ ひらめいた大胆な予測が当を得ているのかどうか、今後も検証を続けます


TPL-200専用BOXの開発
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