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マルチアンプ方式に於ける帯域間レベルの整合
2021-12-V1.0
出展/出所 : Kurizz-Labo(栗原信義)
ここではマルチアンプ方式に必要な再生音圧レベルの求め方について説明しています。


高音質化は音源(Music Source)再生の忠実度を極限まで高めることです。

この高忠実度(Hi-Fidelity)再生を最も阻害しているのがスピーカーと室内音響です。

聴取位置での周波数特性の平坦化は家の土台の水平と同様に最も重要なことです。
■ 帯域間の再生音圧レベルを合わせる(3Wayで説明)


[図1]各帯域の再生音圧レベルはパワーアンプのゲインとSPユニットの能率で決まる

※1:
・アンプの出力(W)とゲイン(dB)は無関係だが一般的には高出力アンプほどゲインも
高く設定される傾向にある。
・マルチアンプ方式では同じゲインのものが自由度が高いなど使い勝手が良い。
・入力感度は8Ωの負荷で1Wとなる電圧「2.83V」になる時の入力電圧で示している。
・例えば入力感度が0.1Vのアンプは 2.83/0.1=28.3(倍)で、ゲインは29dBとなる。
・図のATTはチャンネルデバイダーの出力調整やアンプのゲイン調整によって実施する。

※2:
・能率は8Ωのユニットを基準に、4Ωのユニットは+3dB、16Ωは−3dBで計算する。

・ マルチアンプ方式での重要な要素に「帯域幅」と「音圧レベル」があります。

・ 帯域幅には特段の制約はなく知識や経験、資金や好みで決めることができます。

・ しかし、音圧レベルは全帯域で再生レベルを完全に一致させる必要があります。

・ 更に聴取位置での周波数特性が30Hz〜15kHz間で平坦となることが理想です。

・ ただし、これを達成するには室内音響特性のフラット化という課題があります。

・ どんなに高価な装置を備えても最後に室内の強い影響を受けるのが現実です。

・ 音楽ホールも録音スタジオも室内音響特性の良否が決定的に重要なのです。

・ 土台となるスピーカーと室内音響特性のフラット化が高忠実度再生の鍵です。

・ オーディオはソースに入っている音楽が聴覚に届いた時点で完結します。

・ この達成こそがオーディオの最終目標であり、また最大の難所でもあります。

・ 例えばマルチのレベル設定や室内の影響で周波数特性に山谷が生じると・・・・


[図2]3Wayシステムで中域の再生レベルが±3dB変化した場合のイメージ

・ 中域が±3dB変化すると「音質が激変し、別のシステム」と感じるほどです。

・ 僅かな変化でも1 oct.以上の帯域で生じれば音質に決定的な影響があります。

・ 低域や高域の場合はシステムの特徴(個性)として語られることもあります。

・ 再生周波数特性のフラット化は、Hi-Fi=高忠実度再生の基本です。
※ 「スピーカーは周波数特性では語れない」という過去の迷信からの脱却が成功の鍵です。


----- 閑話休題 -----

・ 実測したスピーカーの中に極めてフラットな特性の製品がありました。


[ 2015年12月発売の JBL 4367WXの高域ユニットの再生周波数特性 ]

・ スピーカーの目的は電気(音楽)信号を正確に音波に変換することです。

・ 周波数特性に大きな凸凹があれば製品の個性(クセ)となり正確さは損なわれます。

・ 1970年代、LE175とHL87ホーンの組合せで発売されたユニットがあります。

 
[ JBL LE175DLH ] [ LE175DLHの代表的な再生周波数特性 ]

・ このユニットで聴くスネアドラムのブラシワークは絶品・涙もの!でしたが・・・

・ 独特の魅力や個性を再生装置に求めるのは世の中を色眼鏡で見るのと同じです。

----- 閑話休題:END -----


■ パワーアンプの増幅度の求め方

・ SPユニットの能率は多くの場合、メーカーの資料に記載されています。

・ アンプのゲイン(利得)はメーカー製でも不明な場合が多々あります。

・ こんな場合に備えてアンプのゲインを自分で調べる方法を紹介します。


[図3]パワーアンプのゲインを計算する

・ アンプのゲイン(dB)は入力電圧(V)と出力電圧(V)の比(倍率)です。

・ 具体的には負荷(8Ω抵抗)に1Wを与える時の入力電圧を求めて計算します。
※ 実際のスピーカーではインピーダンスの変動が大きく、大きな音も出るため抵抗を利用します。
・ BTL接続は電源などが充実していれば4倍の出力が得られる便利な方法です。

・ この場合、出力電圧が2倍となるためゲインは単体アンプの6dB増しとなります。

■ 手元の機材でアンプゲインを調べる方法

・ 用意するものは8Ωの抵抗と発振器と交流の電圧計です。


[図4]パワーアンプのゲインを調べる方法

・ 負荷抵抗は手違いによる焼損の可能性もあるため10W以上を用意します。

・ 発振器は1kHzの正弦波が出てレベルが可変出来ればOKです。
※ iPhone(iPad)+「AudioTools(\2,440)」など
・ 電圧は1kHzまで正確に測定出来るDMMがあればOKです
※ Digital Multi Meter(交流電圧が20kHzまで測れる製品を推奨)
・ 負荷に「2.83V」が出る時の信号レベルを計測して増幅度を計算します。

・ この増幅度をデシベル値に変換できるサイト(図5)で簡単に結果が得られます。


[図5]計測した倍率からデシベル値を調べるサイトの例(クリックでサイトへ)

・ 上記画面で倍率を入れ、計算(Calculate)を押すとdB値が出ます。

・ この増幅度とSPユニットの能率から各帯域の音圧レベルが判ります。

・ 全帯域での音圧レベルを可能な限り一致させるのがマルチアンプの基本です。

・ 下図はユニット間バランスの例です。


[図6]各帯域を受け持つユニット間のレベル差が±3dB以内に入っている例


[図7]ユニット間のレベルが大幅に異なるスピーカーシステムの例

・ 図6と7はいずれも帯域間レベルを調整する前の各ユニットの周波数特性です。

・ 各帯域のレベル差をチャンデバの出力調整などで整合させて完成となります。

・ ただし、各ユニットの受持帯域内での再生特性がフラットであることが条件です。

・ 例えば中域ユニットが下図のように傾斜した特性だと永久に整合できません。


[図8]ミッドレンジユニットの特性が傾いていた場合の帯域間調整

・ 上記の場合、レベルの調整だけでは全帯域のフラット化は不可能です。

・ 何らかの方法でミッドレンジの特性をフラットにする必要があります。

・ L/Cネットワークの製品の中にはユニットの歪んだ特性を打ち消す回路を使用
  するものもありますが、L/Cが抱える根本的な弊害は残ったままです。

・ 今時の解決策としては特性を積極的に補正出来る機材 を使用することです。
※ 実測結果を元にFIR型デジタルフィルターで周波数特性を含む諸特性を理想化できる製品(DEQX等)

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■ DMMだけでアンプの増幅度が判る測定アダプターを開発中(クリズラボのCM)

・ マルチアンプシステム構築の第一歩は、スピーカーユニットとパワーアンプの選択です。
・ これはDIY派のオーディオファンにとって最大の楽しみと苦しみですが、これが決まると
  次は使用するアンプのゲインとユニットの能率から再生レベルを算出し、まずは全帯域の
  レベルを机上で整合させることです。([図1]の作業)
・ そのためには、自作アンプはもとより、記載がないメーカー製アンプなどのゲインを調べ
  ることが必要です。
・ クリズラボではこの測定(図4方式)が簡単に出来る測定アダプター を開発中です。
※ 2022年春・発売予定
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・ マルチアンプシステムを成功させる秘訣は出来るだけフラットな特性のユニットを
  選択する、あるいは特性をフラット化できる手段を使うとともに、全帯域での再生
  特性を限りなくフラットにすることです。

・ クリズラボは過去15年間で200を超すシステムを拝見(調整)してきました。

・ 最初にユニットの測定をした段階で悩んでしまう出会いも少なからずありました。

・ 次の例は「正確な変換器」よりも「個性的な音」を目指した結果なのでしょうか。

 
[ 推奨帯域内で極端な右上がりの特性である ] [ 左と同じ製品ですが、さらに個体差も・・・ ]

 
[ 敏感な帯域に大きなピーク(共振?)が ] [ どの帯域で利用するのがペストなのか? ]

・ これらのユニットを通常のチャンネルデバイダーやL/Cネットワークで使う場合は
  相当の覚悟が必要です。

・ 音響メーカーなら音楽の感動や個性、芸術性などを歪めずに再現できる製品を!

・ 尚、これらの製品をご利用中のシステムではDEQXのスピーカー補正機能でユニット
  をフラットな特性に変換することで、Hi-Fi再生という最終目標を達成しています。

・ ユニットを含む全帯域の周波数特性を整えるDEQXなどの先進的な機材を使う場合
  でも基本となる音圧レベルを揃えることは最終的な音質の向上に極めて重要です。




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